語り継がれるエピソード

丸福珈琲店の歴史丸福珈琲店のこだわり語り継がれるエピソード



語り継がれるエピソード

大阪の中心地である“ミナミ”の歴史とともに歩んできた「丸福珈琲店」。重ねた年月だけ、後世に語り継ぐべきエピソードがあります。
当時のエピソードに触れ、タイムスリップしてみませんか。

■おてふき

戦後、おてふきを導入。現在も全く変わらぬデザインで千日前本店のサンドウィッチに添えられています。
当社80周年記念事業として、山田洋次監督の映画『小さいおうち』を応援協力することになり、上映期間中はコラボデザインのおてふきが丸福全店と映画館にて使用されることとなりました。

  

■紙ナフキンやストロー

こちらも昭和30年頃からのデザインのまま。シンプルな福マークは戦前に作られたもの。ロゴやフォントもまさに手書きのアナログな感じが、あたたかみを感じられるデザインになっています。

 

■年賀マッチ

戦後すぐから、毎年お年賀のマッチを店頭に設置していました。
画像は1959年のもので、3色のシャンデリアがモダンなデザイン。
千日前本店のあたりは当時、《坂町》と呼ばれていました。

 

■千日前本店のフロアーデザイン

千日前本店は、平成2年に本社ビルとして建て替えられた丸福ビルの1階・2階にあります。店内の床は、昔懐かしい板張りや大理石の石張りなど。フロアーのポイントのデザインは珈琲の豆の木や実から起こしたオリジナルデザインとなっております。
他にも扉に小さくデザインされた埋め込まれているタイルもスペインのアントニ・ガウデイのモザイクのモチーフに影響を受けたものです。

 

■様々な珈琲器具

創業者は、珈琲の研究のため様々な珈琲の抽出にかかわる器具を外国人シェフや友人を通じて入手しました。
たくさんの器具の一部は、いまやアンティークとして店内にディスプレイされています。
丸福独自の抽出器具は、これらのコレクションや洋書で書かれた珈琲の専門書(焙煎機や器具の機械工学の本)を創業者自らひも解き独自の理論で設計してものを町工場の職人さんに今も一つずつ、手作りしていただいています。

 

■角砂糖

千日前本店のカウンターにとんがり帽子をかぶったようなブリキ製のものが…この存在感のあるものは創業者が考案した角砂糖ボックス。
とんがり帽子(?)の部分のフタ をあけて角砂糖を入れるとしたからスライドして出てくる仕組みとなっています。もちろん今も現役で活躍中です。


戦前戦後のもののない時代。喫茶店に子供を連れてくることも少し不謹慎な時代に、この角砂糖を子供やお孫さんの為に持ち帰ったり一緒に連れてきて口に一粒、おやつ代わりに入れてあげるお客様が多かったのです。
ふかした芋をもらえたら大喜びというような時代に、丸福の純白で大ぶりの角砂糖はアメ代わりとして子供たちは大いに喜んだようです。そのときの子供達が今や親や祖父となり、家族の心温まるエピソードとして家族に語りつがれています。
昔は珈琲には角砂糖がつき物だった。戦火がひどくなると、創業者は鳥取県の菩提寺に珈琲豆と角砂糖を疎開させたという記録が残っています。
赤紙一枚で『これが最後の珈琲』といって戦場に向かっていった常連のお客様達が、戻ってきたとき、迎える為の珈琲でした。。

 

■山田皓齋画伯との親交

画伯 山田皓齋氏と創業者は、パリ留学のバックアップをするなど深いかかわりがあり、丸福の為に昭和30年代に100号にも及ぶ大作を創作されていました。現在は千日前本店の2階にて鑑賞できます。
その絵画の近くには、男性化粧品のマンダム社の故西村会長がお気に入りの席があります。週末には自分の書斎のようにゆったりと珈琲を楽しんでおられました。

 

■辰巳柳太郎氏・緒方拳氏師弟の思い出

昭和の新国劇を支えた名優 辰巳柳太郎氏とその付き人だった緒方拳氏ともに創業者らと親交が深く晩年まで御来店いただきました。
辰巳氏による木彫りの看板と緒方氏の絵手紙のひとつ。
緒方氏が生前最後に御来店いただいた際、この木彫りの看板をもう一度ご覧になりたがっていたのに、お見せできなかったのが心残りのひとつとなっています。

 

■ステンドグラス

千日前本店の奥に進むと目に留まるのがステンドグラス。
創業者が横浜の外国客船の解体オークションに出向き、ひと目で気に入って買い付けてきたものです。
ある時、このステンドグラスの前で立ち尽くしている一人の男性。お声をかけると、このステンドグラスのあった客船にコック見習いとして乗船していた方でした。
言葉もうまく通じず、コックの下積み生活で何度も日本に帰りたいと思ったが帰ることもできず…そんな辛い時代にこのステンドグラスを見ては自分を励ましていたとの事です。
たまたま旅先で美味しい珈琲を飲もうと立ち寄った店で再会するとは…と言葉を詰まらせておられました。
すぐそばの席が空くまで待っておられ、席を移られてからもステンドグラスと対話するように過ごされていました。
長い航海のあと、今は丸福に訪れる人々を見守っているような優しい光を放っています。

 

■松鶴さんの席

旧・千日前本店の入口近くの席は、6代目笑福亭松鶴氏のお気に入りでした。奥様(松鶴さんは、あーちゃんと呼んでいらっしゃった)とともに御来店いただきました。
松鶴さんが亡くなられた後も、しばらくはその席が空いていても、『あそこは松鶴さんの席やから』と御存知のお客様方は座らなかったそうです。大阪の人情味あふれるエピソードです。

 

■田辺聖子著・薔薇の雨

よく御来店いただいた田辺聖子氏の小説の舞台に。
年の差に悩む女性の恋愛の切ない心情を丸福珈琲店を舞台に描かれています。

 

■笠置シヅ子氏・曾我廼家五郎八氏

『東京ブギウギ』を大ヒットさせた歌手 笠置シヅ子氏と松竹新喜劇の俳優 曾我廼家五郎八氏とは創業者は大変親交が深く、家族ぐるみのお付き合いをさせていただいておりました。
(千日前本店のカウンター内にて。)

 

■レトロなストーブ

千日前本店の窓側のエリアの一番奥にある大変レトロなストーブ。ストーブとしては使用されてはいません。
もともとは創業者宅の応接間にあったもので、平成2年に本社ビル・店舗が立て直されたときから昭和レトロな存在感を出しながら店内に設置されています。

 

■大倉陶園との出会い

創業者はインテリア・美術品・食器などが好きで、特に大倉陶園の器に魅せられ収集しておりました。
当社が大倉の器を使用してる理由でもあります。
ひとつひとつが職人さんによりたくさんの工程を経て、あの美しい器になっていくのは、さすが宮内庁御用達といえるでしょう。
大倉陶園さんには深いお付き合いを頂き、最近では当社の器には金の福の刻印を入れていただいております。
(現在、一部の店舗で使用しております。)

 

■輪島塗でいただく珈琲

日本を代表する輪島塗と日本人が作り上げた昭和の珈琲をあわせて楽しんでいただこうと輪島塗の漆デザイナー桐本泰一氏にお願いし、トレー・カップ・スプーン・フォークのセットを創作していただきました。
米粉や和三盆・黒豆などの和素材とのコラボスイーツとともにお楽しみいただけるよう限定でお出ししております。(企画メニューの為、期間・店舗・限定となっており常設メニューではございません。)

 

■丸福珈琲店の命名の由来

よくお客様より尋ねられますが、創業者が大阪で珈琲専門店を始める際に姓名判断などに詳しい知人に相談したところ『丸福』という屋号と自分の名前の『伊吹』が大変相性が良いといわれ、店のマークにも『福』とともに『S.IBUKI』と表記したということです。